ザ・リーグ・オブ

 昔、書いた文章をちょっと再録させます。


 では、どうぞ。
 
 
 
 
 
 ネタバレです。と、書いときます。
 そして行きがかり上、ある有名ミステリ映画のネタもばらします。ご注意あれ!

▼『リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い
 うう、この邦題・・・・。
 ハリウッド系エンターテイメントの及第点目指して、しかも、きちんと取れました的な話で、世界的な危機を描いた話かと思いきや、いきなりすごいみみっちい、個人的レベルの話に落っこちてしまってびっくり。

 敵はオペラ座の怪人よりファントム。最初、誰だか分からずDr.ドゥームみたいな変な人がいるとばかり。

 序盤のアクションシーンはお気に入り。
 普通に考えたら、リーダーのはずのネモ船長が普通のメンバーの人になってるので、どんな活躍をするのかと思ったら、超武闘派でばりばりのカンフーの使い手。足がムチャクチャ高くあがって、群がる敵を蹴散らします。そして、一方には剣で優雅に闘い続けるドリアン・グレイ。その優雅さと、余裕のかましっぷりはマトリックスの覚醒者を凌ぎます。

 メカも良い! ノーチラス号の雄姿はやはり大スクリーンで見ておきたいとこ。
 その、ノーチラス号が途中、沈みかけるシーンでネモ艦長が「ハッチを閉めろ!」「しかし、中にはまだ人が!」「やむをえん!」と叫ぶシーンがありました。ああ、ナディア・・・・。と思った人いませんでしたか? 私は思いました。

 仕掛けはおおう、と思わせる内容のメタ・トリック。
 主人公達に依頼をする人物が、イギリスの政府を代表して、といって現れまして、彼の名がM。主役のクォーターメインをやってるのが、007で有名なショーン・コネリーなのでボンドの上司に当たるMにかけてる訳ですね。でも、Mって? と思ってたらば、原作者のコメントで「007関係は版権がメンドーでねえ」というのが見つかりました。なるほど、ほいで、言い訳のききそうなMだけだして、さらに、シャーロック・ホームズのお兄さんであるマイクロフトをかけたのね、うんうん。
 と、マニアはうなずくわけですが、実はこれがトリック。
 世界の危機に立ち向かうため、リーグが結成されたのに、そもそもそんな危機もなかったし、支援団体もない。
 どころか、主人公達を支援してる団体が丸々、敵で、それはあのモリアーティー教授の犯罪組織だったのです! がーん、そっちのMですかああ!!
 というオチなんです。
 驚愕のメタトリック。それだけのために、ショーン・コネリーだったのか! クォーターメインといえば、そもそもインディ・ショーンズの先祖のようなものですから、2重3重に心理的トリックがかけてあるわけ。これはすごい! 

 特に、『ドラキュラ紀元』シリーズを読んでる人は騙されるでしょう。ここはうまくできてましたが、その分、策謀の部分がせこくなってしまうのが大欠点でした。

 さてさて、もひとつ言っておきたいのが、この映画自体がアンチ・ミステリ映画になってるということ。
 途中、スパイと勘違いされた透明人間が姿を消しますが、実は犯人はドリアン・グレイでした。ここのドリアン・グレイの犯罪シーンの回想・演出。これはあのポワロ・シリーズの映画版を彷彿とさせる。
 さて、ここでポワロシリーズのネタをばらすのでご注意。
 よいですね?

 先の演出で、この映画はポワロシリーズのパロディーもしくは、アンチ・ポワロだと宣言しています。
 ポワロミステリ映画には有名な格言があります。犯人がキャストのギャラで分かってしまうというもの。ギャラが**な人が犯人です。ところが、唯一、ポワロものに俳優のギャラからは犯人が分からない映画があります。それは**。豪華俳優が「勢揃い」するのです。どの人もギャラが高そうなのでさっぱり分からない。

 このような、裏側からつつくような手法でミステリ映画を見ようとする人に対する痛烈な皮肉をかませ、かつ、それをトリックとして仕掛けているのが、この『リーグ・オブ・レジェンド』。

 象徴的なことに、犯人が分からないポワロのミステリ映画には、あのショーン・コネリーが出演しています。


 と、ここまでが、ネタバレの話でした。
 トム・ソーヤーの使い方とか、危機とか、見せ場の作り方とか、ラストとか、ほんとに製品・商品としてつくってあるのが、アレでしたが、意外に愉快なお話でした。
 注意して置きたいのは、とある有名ミステリが、あっさりネタバレされてる点。
 原典では、その”彼”も現れたそうです。むー、どんな外観か見たかったぞ。

 で、原作を注文してみました。届いたらご報告いたします。

 それにしてもあの、ラストシーンは何を言いたかったんでしょう。
 ちなみに、原典とは大分違う様子。
 で、その原典もシリーズ第2弾が出ております。続編が出る可能性はかなり高いのではないでしょうか。

 ショーン・コネリーのような年寄りにアクションをさせるのが大変らしくカメラワークでごまかしてます。そのせいで、目に負担を強いられます。きついですぞ。
 そして、怪人あばれっぷりではハルクより、こっちの方に軍配があがります。CGっぽくなく、人らしく動きます。

 本作をまるで、アメコミのようなという批評を見かけましたが、これは恥ずかしいかも。


 早川SF全集版の『海底2万里』は流し読みしました。