アメコミの読みづらさについて その向き

 
 話題になってたので、考えてたことをまとめてみます。
 
 
 劇場では上手下手というのがあります。
 正しい者、主人公は大概、右から出てきます。
 テレビや映画なんかもそうです。
 宇宙戦艦ヤマトの出航シーンなんかが代表的。行くときは右から出てきて、左へ進みます。
 これが、漫画をめくる向きといっしょなのですね。
 
 読者は主人公といっしょに物語を進むので、物語の向きと読む向きがいっしょで読みやすくなります。
 逆にアメコミやBDは左のコマから読むので、本能的な物語の進行方向と主人公の動きが逆になって、流れがぶつかって、読みづらくなると思います。
 
 
 
 左のコマから読む漫画の場合、主人公を画面の右に置くと敵は左に来ます。そうすると、物語の方向にそってやってくる人物は敵で、主人公は待ち構える方になってしまいます。これだと、ちょっとちぐはぐな感じがします。
 
 逆に、では、左から主人公が来るとしましょう。これは一見うまくいきそうなのですが、画面いっぱいに右向き顔(キャラクタの右耳が我々に見えている)ばかりが並んでなんだかこれも落ち着きません。それに主人公が上手(画面の右)から出てこなくなってしまいます。
 でも、アメコミは基本、このスタイルなのです。
 
 
 右向き顔が多いのが、なぜ不自然なのか。
 右向き顔は描きにくいのです。
 右利きの人が描く場合、手首を固定すると描きやすいのは左向きの顔(画面の左側を向いていて、右耳が我々に見える)です。
 ストロークの問題でそっちの顔の方が描きやすいのです。
 普通、似顔絵、キャラ画は、大概、左向きの顔でしょう。
 これは、このストロークの問題が関係してきます。
 世間には、左向き顔が大量にあふれていてそれが当たり前なのです。
 
 
 日本漫画は右から左へ読むため、上手から自然と主人公を出しやすく、左向きの顔が多くても不自然ではありません(制作の効率も良いでしょう。)。
 
 アメコミの場合は左から右へ読むため、物語の流れと、上手・下手の関係性がぶつかってしまいます。それでも、自然な流れにしようと右向き顔や、苦肉の策で正面顔を多くして、主人公を画面の左端・下手から出そうとしています(そのせいで生産効率が落ちているはずです。)。
 下手から主人公が出てくる。
 右向き顔がとても多い。
 不自然なので、日本人は違和感を覚えるでしょう。
 
 
 それが読みづらさにつながっている。
 私はそのように考えています。
 
 
 もうひとつ。
 日本の漫画は開いたページを前提にしてデザインされています。ページがABCDと続いていたとしますと、
「AB」「CD」「EF」と構成されて、これは雑誌でも単行本でも揺るぎません。2ページで1枚の画面として構成されているのですね。
 しかし、アメコミの場合は「AB」「C広告」「DE」となることがあります。1ページ=1枚と考えられ、それが右側に来るか左側に来るか決まっていないのです(見開きページが皆無と言うことではありません。ただし、日本にあるような右端のみへのタチキリ、左端のみへのタチキリというのはありません)。
 比べれば、最初から一画面でまとめている日本漫画の方が読みやすいはずです。