『贈る物語Mystery』いろいろネタバレします 注意
- 作者: 綾辻行人
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/10/12
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (31件) を見る
人に迷惑をかけない自殺の仕方から発展した考えで、完全に自立した自殺、自己の意識以外 道具も何も介さない自殺というのがあるのか というのをミステリのパズル的側面から考えてました。即身仏や舌をかみ切るというのがすぐに思いつくのですが・・・
自殺に見せかける殺人 というのはいくらかバリエーションがあるのですが、そのうち、餓死をテーマにしたものというと、宗教家が餓死した状態で発見させるという短編。これを思い出します。
子供の頃に読んだミステリトリックの本で、知りました。
この本は、有名ミステリを抜き出して2〜3ページにまとめ、クイズ形式にして回答編をくっつけてあったものです。虎が表紙だったのをよく覚えていますが、題名は思い出せません。
『贈る物語Mystery』というアンソロジーを今読んでるとこなのですが、綾辻氏がミステリトリックのぱくりは許せないこと、特に小説から他メディアに移しただけのものはさらに許せないと書いています。また、上にあげたような本の存在も許せないと。
そんなものかな と、思ってたのですが、今回、たまたま「密室の行者」というまさにその宗教家の餓死を扱った短編ミステリをこのアンソロジーで発見し、読んで、氏の言葉の意味を思い知りました。
全然、面白くないのです。
ところで、そのミステリのネタばらし本の中で、パズル小説の朗読会のようなものの存在が解説されていました。なんでも、戦後まもなく、ミステリ会の重鎮と呼ばれるような人たちが集まって、やってたのだそうで、賞金も出たとか。記憶では高木何とやらいうひとが「今晩は晩ご飯の準備はいらないから」と、どこかの魚釣り師のようなことを奥さんにいって出てきて「妖婦の」なんとかいう話を読んだんですが、あっさり解かれてしまって・・・
さて。
本アンソロジーに収録の「達也が笑う」は、題名だけ聞いたことがありまして、冒頭を読んだところ、このミステリ読書会のような話がほぼそのまま出てきます。もしやと思って、調べてみたら、なるほど、これもそれなんですな。後でじっくり読んでみます。
それで、「密室の行者」の話なのですが、意志に反して餓死してしまう というトリック、私は別の漫画で読んだことがあります。
小学館から出てる時代劇漫画で週刊ポストに連載されてて、エッチなシーンが多くて、主人公が鶴のポーズを度々とる・・・題名が出てきません。捕物帖ですな。
この中で、悔恨のあまり、餓死する男の話が出てくる。米は手の届く場所にあったと記憶しています。なのに、なぜ、彼は食べ物に手を伸ばすことに耐えられたのか。
読んだ当時、なるほど と思い「密室の行者」を読んだ上でのバリエーションかと考えたのですが、どうでしょう。
収録の法月氏「カニバリズム小論」についても。
殺人犯が逮捕され、冷蔵庫から生首が発見される。
果たして犯人の動機は。
・・・というもの。
ふたりの人物の会話で進み、カニバリズムの蘊蓄だけで成り立っているという見方も出来ると思います。私は、そう思います。
オチの部分ですが、<ネタバレ注意>
私は、相手を侮辱する というところから、人間を獣・食料としか見なさない 人として見ない という時点で十分かと思いました。そこからひねって**というのは、行き過ぎではないでしょうか。
最後の一行で、そこに説得力を持たせ、サプライズがある というギミックがあるのですが、ちょっと、出来が悪い。
出来が悪いというのは、比較の問題でして、このアンソロジー解説で綾辻氏が名前だけ挙げているカーの短編。あれに比べるといまいちです。
どうでしょうか。
さて、もうひとつネタバレが重なります。
最後に、実は***だと、明かされるというパターン。子供の頃に映画で、体験しています。『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』が、それで、実はこれはカーから来ているのではないか というのが、私の新説で、そこからさらに『ヤング・インディ』と来た。そしてそれがいまになって『ヤング島耕作』になってしまったというのが私の珍説です。
長々読んできた人、ごめんなさい。