司政官シリーズ

司政官 全短編 (創元SF文庫)

司政官 全短編 (創元SF文庫)

 眉村卓の代表作にして、日本SFの金字塔ともいえるこのシリーズ。
 実は1冊も読んだことがありません。
 なぜといって、まず、入手が困難で、しかも長く、重い。気がついたときには相当の量が出ていて把握も難しかったのです。
 
 とはいえ、80年代の一時期は熱心に眉村卓の少年ものを読んだものでした。
 当時、角川文庫にはまだ、スニーカー文庫など影も形もなく、富士見書房はぎりぎりでヤングアダルトに挑むか挑まないかのところ。
 角川文庫の棚の一区画はしっかりと眉村卓でおさえられ、思えば、棚の専有面積は眉村卓と、赤川次郎荒俣宏がしめていたような気がしま・・・気がするだけでしょうが、ブギーポップ涼宮ハルヒ(どちらの作者も中学生の頃に読んでるのではないでしょうか。)どころではない人気を博していたように思われました。
 
 超能力を主題にしたものを中心にいくつか読んだのですが、超能力ものといえば、バビル2世超人ロックしかなかった時代に、ちゃんとした考察を重ねて書く というアプローチが新鮮でした。
 主人公は少年たちですが、あまり感情に流されたり、だまされることなく、真剣に謎や事件にアプローチしていきます。これは最近の小説を見渡してもちょっと、珍しい。
 
 ミステリでいうと、ちょうど『不死鳥を倒せ』や、ちょっといいすぎかもしれませんが『キドリントンから消えた娘』などを思い出させます。この方向性が突き詰められたのが『不定エスパー』シリーズで、主人公のイシター・ロウはとにかく何に対しても考えて考えて判断するのでした。
 
 そんなわけで、読みづらさから結局、まだ、後書きしか読んでいません。
 ついでに『日本SF・幼年期の終り』収録の眉村氏、その周辺の作家のコメントも読みました。
 
 うーん。
 おそらくはベストセラー作家といって良い位置にあった氏の、書き方や、生き方や、婦人のことを考えると、それだけでおなかいっぱいで、なかなか本編を読む体勢になれません。
日本SF・幼年期の終り―「世界SF全集」月報より

日本SF・幼年期の終り―「世界SF全集」月報より

 ああ、でも、もし氏がクラスメートであったなら、尊敬し、いろいろ話しかけていたと思います。
 
 
 
 退職後に前の会社の部下と町中で出会って・・・というエッセイを読んだのはあれは『題名募集中』でしたでしょうか。
 
 『とらえられたスクールバス』が後に角川のアニメ映画になっています。
 『カムイの剣』の流れかもしれませんが、自分には様々な意味で後のスニーカー文庫、富士見ファンタジアの流れの原型であるように見えます。