酒見賢一

 サカミだとばかり思っていたら、どうもサケミと読むようである。
 
 墨攻の廉価版がコンビニに並ぶようになった。
 読んでみると、ここら辺はきちんと追っていたのだということが思い出されてきた。例のトンネルを掘る男が一話目に登場していたのには気がつかなかった。
 記憶と違うところもあった。王の妻か誰かを殺すか、戒めていたような気がするのにそのようなシーンがなかったのだ。中国史の中でも似たようなシーンがあったが、あれは誰であったか。韓信だろうか。
 
 とまれ、酒見氏への興味が再燃した。
 記憶に頼って部屋の中を探し回ったところ『陋巷に在り』の1巻が見つかった。
 途中まで読んでいたはずなのにさっぱり思い出せない。
 というわけで、再読。
 あとがきに驚いた。平井和正をこんなに褒めていたとは。そういえば最近、氏の新作を見ない。
 
 『陋巷に在り』は孔子の一番弟子 顔回について、記録がほとんどないのをいいことに酒見氏がでっちあげた伝奇小説。『後宮小説』『墨攻』と違い、こちらは呪術が出てきてなかなかに豪勢だ。
 結界をはるのに山を使う、などのシーンは覚えているのにヒロインのことはまるで覚えていなかった。押しかけタイプ。主人公の能力をただ独り理解し、出会いをきっかけにいい子になってしまうというコテコテのパターン。
 安彦版スセリ姫を思い出す。
 
 なかなか面白い。
 漫画にならないものか。
 
 できれば、週刊で。
 
 
 
 ところで、小学生のころ、有名小説のコミカライズと銘打ったもので同じようなヒロインを見た。
 いたずら娘であったが、恋をして、様変わりするのである。一時期、姿を消して町で働き、戻ってくるがほれた相手の父親にどうしても信用してもらえない。
 そこで父親が町に出て少女の評判を聞いて回るのだが、どこへいってもあんなよい娘はいないといわれてびっくりするというもの。オチは覚えていない。
 あれはなんだったんだろう。