ミステリーは身をたすく
- 作者: 赤木かん子
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 単行本
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フル ネタバレでいきます。
●マーク・トウェイン「百万ポンド紙幣」
船が漂流し、無一文で大都市にたどり着いた男。
いきなり見知らぬ人物から100万ポンド紙幣を渡され、1ヶ月後に返してくれ といわれる。きちんと返せば、立派な職を与えてくれるという。
こういう高額紙幣を渡された場合、果たして人はそれを有用に使えるのか? そういう賭の対象にされたのです。
はたして、男はこれをうまく使いこなし、さらに、たまたま出会った以前の同僚と会社も作り、資金を集め大成功する。
その上、美しい女性と結婚まで決めてしまう。
男は金を返し、しかもその女性が たまたま 賭を持ちかけた家族の身内であったことを知る。
めでたしめでたし。
アーチャーの『100万ドルを取り返せ!』の源流?
エディ・マーフィーの映画『大逆転』も思い出させます。
●O・ヘンリ「千ドル」
遺産相続もの。
ある若者が、遺産相続にいくと、あなたには千ドルだけ残された と言われる。
これを自由に使って良いが、使った内容を教える必要があるとのこと。
いろいろ考えた末、自分の親類に親切をしようと、ほぼ気まぐれで使って意気揚々と帰って報告すると、実は、これが試験で、使ったお金の使い道次第で遺産がもらえることになっていたと打ち明けられる。
報告をしなければ、遺産がその親類に届くこともすぐに見抜いた若者は、酒を飲むのに使ったと言ってその場を去るのだった・・・。
実は、試験でした 系のお話。
これをトゥエインと並べるのはうまい。
●ヘンリイ・スレッサー「逃げるばかりが能じゃない」
真面目な職員がある日いきなり大金を盗み、しかもどこにも逃げず、おとなしく警察に捕まった。
しかしお金の隠し場所だけはゼッタイに教えない。
男はどこにお金を隠したのか。その目的は何だったのか。
10年近く後、模範囚であった男は無事、出所する。
当時、担当刑事だった警察官は彼を追うのだが、男は警官にあっさりお金を返してしまう。
実はお金は銀行に預けられ、複利でふくれあがっていたのだった。
北村薫の短編集か何かで似たような話を読んだ記憶があります。
ときどき部屋を抜けていく男。何か不正をしているかと思うのだが、お金のつじつまは合っている。実は、こっそり出かけて、会社の金を元手に投機で増やしていたのだった・・・。
これより先にドラえもんの「ボーナス1024倍」を読んでいるので、そこまでの驚きはなく、むしろ1ジャンルとしてあるんだなあと。
そういえば。
謎の男が中世の世界に現れて金貨一枚だけ預けて、運用方法を指示し、それがとんでもない金額にふくれあがり、引き出されると困るのでみんなが大慌てするという話もありましたな。あれもオチがいい具合で。
ふむ。
このジャンルで、アンソロジーが出来るんじゃないかしら。
●ジョンストン・マッカレー「サムの放送」
スリの天才、地下鉄サムがラジオ放送に出るというシリーズの中でも多分、ちょっと奇妙な話。
なじみの警官に、ラジオでいってたようにはスリなんて出来ない とバカにされたので、財布から金だけ抜き取ってこっそり戻しておくのだった。
これも原形になるのかしら。
ブラックジャックのひげおやじスリ師の話とか、小山田いく『マリオネット師』のさらにさらに源流のような。
●アガサ・クリスティ「風変わりないたずら」
遺産は実は、その切手。
貴重なものなんですよ というパターン。
切手が、というパターンは私もいくつかお目にかかっているのですが、これが元祖なのかしら。
母親が行方不明になって、元いたホテルに行っても誰も知らぬ存ぜぬというが、実は感染力の高い病気にかかっていたのを隠すためで・・・という小説もいくつか読んでて、これもどれが源流か謎であります。フラスコのレンズは、みんなが私こそ犯人だっていうのが元祖? 氷の凶器で殺すってのは、どれが最初?
ほにゃららというミステリ作家はさらにその切手を隠すという短編を書いてますが、切手を2枚重ねに貼るだなんて、そんな恐ろしい・・・。
●同「二十四話の黒ツグミ」
いつもと違うメニューを頼んだ男がいたことから、ポワロは背後に犯罪の臭いをかぎ取るのだった。
●寺山修司「怪人フーディニの逃亡芸術」
脱出マジックの名手、フーディニを紹介する文章で、特にオチもなければ捻りもない。
フーディニのひととなりを知るにつけ、そこに「なるほど」という驚きはあるんですが。
寺山修司の文章はたぶん、初めて読みました。
原形を並べようという意図なのかしら。
二巻目の「ミステリーはユーモアとともに」はポール・ギャリコが入ってるそうな。ううむ。文庫で欲しいな。