異世界への分岐 さよなら魚をありがとう

 『金田一少年の事件簿』を見て、恐ろしいなあと思うのは、あの世界がミステリ小説の暗黒世界だからです。
 第一話で明らかになるように、あの世界では『黄色い部屋の謎』は、刊行されてない。
 しかも、明智の活躍を見ると、どうやら『Xの悲劇』も出てないようなのです。
 探偵 金田一が実在する世界とはいえ、クイーンが悲劇シリーズを出してないなんて…。下手をすると、江戸川乱歩が”生まれない”ことになりかねませんし、EQMMが変わってしまうから、ミステリマガジンだってないかも知れません。
 
 アインシュタインがいなくても、誰かが、相対性理論を発見しただろうとは言われますが、しかし。
 クイーンが、ロス名義で読者への挑戦状とともに、現れることがない世界 というのは、やはりひどい世界だと思うのです。
 
 その一方で。
 ソ連がまだ、残ってて。北朝鮮にはロボットが配備されてて。
 でも、ガンダム・センチネルとかは普通にあって。
 女子高生のカバンの中を見る限り、90年代にはすでに「銀河ヒッチハイクガイド」シリーズが全部、翻訳されている世界というのもあります。
 『フルメタル・パニック』世界のことですけども、あの世界はうらやましい気がします。きっと、大森望氏がずっと、新潮社に残ってた世界なんでしょう。でも、そうすると、いろいろ翻訳が滞りそうで、それはそれで困る気も…。