ユリイカ

 安彦良和特集だったので、目を通して見ました。
 その中で気になったのは、伊藤剛というひとの文章。
 いしかわじゅん氏の安彦良和批判を受けて、安彦氏の作画技法を分析するというもの。
 
 私からの疑問点・批判点は大きく二つ。
1)いしかわじゅんの批判について原典に当たっていない。安彦氏の反論を元に批判内容を類推して論を進めている。
 いしかわ氏の言いたいことがまるで違っていた場合、以降の文章に意味がなくなってしまいます。
 
2)安彦良和の前期の作品群を無視している。
 初期の安彦漫画では、アニメの技法がふんだんに取り入れられていました。一連の動作を細かく追ったり、カメラを動かしたりしてたのです。しかしそこから始まって、徐々に物語性や読みやすさ一枚画としての見栄えを重視するようになりました。下手だったわけでも、下手になったわけでもない。
 ただ、初期のころから動きの整合性より見栄えを重視するところがあって、アニメではありえない動作を描いてます。漫画だと見逃されやすいんですが、たとえば剣を動作途中で左右に持ち替えてたりするシーンがあります。これでは、どう中割しても絶対描けません。
 でも、漫画だと違和感なく読めてしまう。
 この矛盾については、単なるミスとも取れるんですが、その前後にテニス漫画を描いていて、そこでラケットの左右持ち替えをメインのネタにすえてるんですね。ですから、獲物をどちらの手に構えて動くか、動かすかということについて、安彦氏は非常に意識的だと思います。