本探し人

 それはメガネをかけた母親と、その娘とおぼしき中学生でした。
 平積みの本を見て、早川 青是のコーナーを見て、を繰り返してる。
「ええっと、エディングス・・・。」
「ないわねえ」
 あの背表紙の弊害がこんなとこに(好きな背表紙です。)出てたのです。
 見かねて
「エディングスの本なら、ここですよ」
 と、棚の上のコーナーを指して、その場を去る。
「・・・教えてもらっちゃった。」
 赤面してたかどうかは、背を向けていたので分かりませんが、てへへと照れ笑いする様子ははっきりと分かりました。
 
 さて、本屋を出ようとしていると、会計を済ませたその母娘もちょうど出て行くところでした。
「ねえ、先に読んでいい?」
「いいけど、あたしも読みたいんだから早く読んでね」
「ほんと? じゃあ、すぐ読むね」
 
 ・・・という会話を聞いて、貴方が思ったようなことをわたしも思いましたと、友達が言ってました。
 ところで、照れ笑いしてたのは、母親の方です。

天と地の戦い―タムール記〈6〉 (ハヤカワ文庫FT)

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