虐殺器官
- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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以下、ややネタバレ気味に感想を。
メタルギアのファンとして知られる作者が、書いた近未来戦争SF。
紛争地域に赴く特殊訓練を受けた兵士が主人公。彼が、各地の紛争の背後に見え隠れする人物の影を追う、というのが大まかなストーリー。
近未来の描写、戦争の描写が卓越しているところが目立ちますが、そこだけでなく、全体的に水準が高く(文章のレベル、伏線の回収方法、キャラクタ造り、構成の妙などなど)、例年ならぶっちぎりでSFの新人賞(あったとして、ですが)もこのミスの1位も取れるレベル。
序盤、すぐに分かるのは作者が、私と同じようなものを見聞きしてきたオタクだということで、それがかなり前面に出てきています。SFからミリタリ、スパイ小説まで古典を中心に読み込み、映画もこなし、それを租借した上で、上品にアウトプットしています。
傑作。
同テーマの過去の作品と比べても、遜色のない出来栄え。
ただ。
時々出てくる、豆知識はいずれもどこかの小説やネットで見聞きしたものばかりで目新しさがなく、その点では山本弘や士郎正宗に劣ります。
全体的なトーンは、80年代の海外SFやスパイミステリを新しい皮袋に詰めなおしたような感じで、例によって、大森望の帯の文句は正鵠を射抜いています。
近いものとして、あげられるのは漫画『EDEN』。
技術描写などが、文章的に映えるもう少し「ありそうな未来」にしてはあるものの『時をかける少女』を見ながら、「3Pすればいいのに・・・」といって、しまうようなみもふたもない感じがつきまといます。
気になった点があったので、一点確認しました。帯でも作中でも言及されるモンティ・パイソンは1969年開始。 ヘンリー・カットナーの『世界はぼくのもの』に収録されている某・短編は1943年に発表されています。
カットナーの『ボロゴーヴはミムジィ』も映画化されたことだし、河出書房さんがアンソロジーを出すんならいいタイミングだと思うんですが、どうでしょう。
- 作者: 米村秀雄,ヘンリイ・カットナー
- 出版社/メーカー: 青心社
- 発売日: 1985/01
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同種のテーマを扱った『メタルギア4』を先取りしたようなところもあるので、本を受け取った小島監督の反応も楽しみなところ。