幸せのちから

 すばらしかった。
 ぜひ、皆さんにオススメしたい。
 
 原作を読んでいないため(事実を元にした映画だ。)、わたしにはどこまで実際にあったことなのかは分からないが、画面の説得力がすさまじく、思わず信じ込んでしまった。『墨攻』には申し訳ないが、格が違う。
 小道具、光の当て方、カメラの振り方、俳優の演技力が高レベルでまとまっていて、話の流れに不自然さを感じさせない。これは監督の力量なのか、ハリウッドのノウハウの蓄積なのか。判断に迷うが、おそらくは前者に違いない。
 ウィル・スミスの息子の演技力には目をみはってしまう。
 
 とにかく、何もかもがさりげなく、本物めいていて、それを撮るための技術力や資金力がどれだけかかかったのか(そう、資金力! 衣服や小道具、風俗にいったいいくらかけたのか。)、想像するだに恐ろしい。
 
 本作は事実を基にしているものの、非常にポジティブなメッセージを発信しているだけに「うそくさい」と感じさせないことが、大命題となっている。
 ポジティブな、平易に言えば「がんばれば願いは叶うんだ」というメッセージは普通の人には、もうまじめに受け取ってはもらえないだろう。観客は、画面の隅にうそを見つけては、「ああ、所詮は作り事なんだ(事実を基にした? ホントかね?)」とケチをつけるはずだ。
 実際、作中では、これがノンフィクションだといわれていても、とても受け入れがたいような偶然が起きている。
 そういった観客の不信感を本作は圧倒的な戦力で徹底的に排除しているのだ。
 営業まわりで首から上が日焼けした主人公、やせてしまった主人公、チープなデジタル時計をはめた主人公をぜひ大画面もしくはハイビジョンテレビで見ていただきたい。