墨攻

 試写会に行ってきました。
 酒見氏の原作小説は読んでおりません。
 漫画版はだいぶ昔に読んだような気がします(一部読んでない場所があるかも)。
 
 「墨攻
 中国に墨家なる思想集団があり、戦地へ赴いては紛争を解決した・・・というような話であったと記憶しています。漫画版は大きく2部に分かれて構成されていますが、この映画では前半の攻城戦のみを描いています。
 
 2時間ちょっとで、予算もたっぷりかけて、有名俳優(だと思います)を起用した超大作ですが、私はつまらなかった・・・。
 しょんぼりして席を立とうとしたところ、後ろにいたおばさんたちが「面白かったわねえ」「どきどきしちゃった」「前半がちょっとのんびりしてたんだけど」
 えーっ!!
 私が原作村の住人だからつまらなく感じたんでしょうか。
 
 原作の魅力はなんでしょう。
 その多くは主人公 革離の性質と彼の背負う宿命によるものが多いと思います。
 ずんぐりむっくりの低い背にハゲ頭。見るものをひるませるぎょろりとした目玉。
 圧倒的な洞察力・行動力・知識。
 そして何より、墨子の教えを信じ、それに準じる彼の高潔なる魂と不屈の精神。
 
 それが、あまり感じられないんですよ。ミスって、城障壁から落っこちて死にかけたり、美人のおねえさんと恋に落ちたり。お前は墨子の教えをどこに置き忘れてきたのだー! しかも、美形じゃん! イケメンに革離をやる資格はないっ!!
 原作で問題になる革離の過去は明かされないし、墨子の教えと現状についての説明がほとんどないんですよ。いや、あることはあるんですが、たった一言でおしまい。
 
 原作の中の名シーンが、またがっかり。敵方の将軍とシミュレーションゲームをやるシーンは予算の関係でしょうが、日が暮れないんですね。なんだかあっさりした描写になってる。民間人に紛れた間諜を発見するシーンも原作そのままなんですが、あの緊迫感がない・・・。
 
 ほにゃ。
 
 音楽はマニアな人ならすぐ気がつくでしょう、川井憲次です。
 
 セットは本物の城が作られていますし、圧倒的な人数のエキストラが生み出す迫力はなかなかのもの。原作を知らなければ、感動できるかもしれませんが、知ってる方からすれば、ちょっとの違いが全部、ダメな方に振れているのがとても気になります。
 
 おすすめしません。
 
 後2点ほど。
 編集が微妙で、ときどき、シーンがとばされているように感じるシーンがあります。
 光の使い方が変です。昼 城の外では、影が変な方向に差しますし、城内では、あてられる光がいかにも作り物めいて、興ざめです。
 
 
 とにかく、原作ファンは、ずーっと、イライラすることになると思うので、お薦めしません。せめて恋愛関係は全部カットしてくれれば、もっと楽しめるのに、残念なことです。わたしにとって、あのヒロインはジャー・ジャー・ビンクスと同じ星の住人です。