『フランチェスコの暗号』
世紀の奇書と言われる書物を読み解く学生たちのお話。
本の解読=卒論という設定で、仲良し大学生4人の青春物語と暗号解読が同時進行で語られます。
以下、やや ネタバレ気味に感想を。
序盤から上巻の前半までの部分は非常に面白く期待を抱かせるのに十分なのですが、その後がいけない。話は類型的かつこじんまりした方向に流れ、殺人事件もなかなかおきないし、ようやく起きた殺人にもミステリ、サスペンスの要素がほとんどない(もちろん、ホラーではない)。
友人や恋人との確執は、表現こそうまいものの「よくある話」へしか展開しない。
また下巻の帯でわかってしまうことなので書いてしまいますが、ラストは炎の中でなにもかもが燃えていく というもの。いやになるほどありがちです。
では、肝心の謎解きである暗号解読はどうか。
実は、キャラクターの一人が、苦労して、思いつき、解決しました ということが語られるだけで、読者には推理する余地がまったく与えられない。そのため、ほとんど共感できません(人形暗号や奇岩城のような使い方もありますが、これも本作には当てはまりません。)。なんといっても解読している本がどういう事情で書かれたか判明するのが、ようやく下巻の半ばに差し掛かってのことなのだ(従来、信じられていたのとは違う事情であるらしいが。)。
よその指摘でなるほどと思ったのは、この本の刊行年のこと。2004年に出た本がもう翻訳されてるのはつまり『ダ・ヴィンチ・コード』の人気を当て込んで出版されたのでしょう。とにかく、ネルソン・デミルと恩田陸は褒めすぎです。
ところで、最近また体重が戻りつつありますと、すみっこにこそりと書いておこう。