009

 『げんしけん』の最新エピソードに『後宮小説』が出てきてびっくり。

 サイボーグ009の話、もう少し。
 
 あの展開が、ムーみたい。
 というのが受け入れられない人が多いみたいですが、そこは後期 石ノ森版、定番の展開で、そこをどううまく落とすかというとこで逃げずに、いろいろ腐心してるところが伺えて好感触でした。
 神様が脳の中でいたずらしてる、ネットワークがあるというのは、瀬名秀明や単行本では削られた『バスタード!』にもあったはず。
 天使そのものを出すと、荒唐無稽になってしまうのをぎりぎりのラインでふみとどまってみせたのは、ほんとにタフだなあ と、感心したトコです。
 
 音楽も、盛り上げにうまくかみあってましたね。
 
 そいでいろいろあって、ラストが月になるのです。
 
 ここで、石ノ森ファンは、月 といえば、石森章太郎の演出に欠かせない要素だけど、画面のそこに置くの? と、ふしぎに思ってると、わー という展開になってる。
 そういうのも面白かった。
 
 009は何度も映画になってますが、その時々のアニメ史をそのまま再現してるようで(当たり前ですけど)、楽しいです。
 
 002には、びっくりしましたけど、ピュンマがあれなことを考えると、うむ・・・。
 
 007は、元は役者だった とかがちょっと感じられたり、005はパワーが出るときになると傷のように赤みがさすというのが仮面ライダー原作版から逆引きされてたりというのも・・・。
 
 今回は、002の加速装置を完全に切ってしまったという平成で復活した設定の削除や、逆に008だけは元から戦闘のプロであるという平成設定をにおわせる雰囲気があったのも、長年のファンには楽しめました。
 
 正義がひとつではないというのを、002と009で体現させたのもうまいですね。あれは米国と日本のそのまま暗喩になってる。
 ふたりが喧嘩してるのを、もう、ほんとは好きなクセニー と眺めてもいいですが、それだけにしてないですよね?
 
 そんな感じで、リブート作品として、大満足の1本でした。みんなも見に行って、どんどん003を描き散らかすといいと思うし、003のコスプレが増えるのも期待してます。

009

 サイボーグ009の話、続きー。
 
 シナリオは良くできてます。
 細かい謎の提出、解決を繰り返して、飽きさせない。
 全員に見せ場があって、無理がない。
 
 え。じゃあ、あの最後の方は?
 
 
 そうそう。
 最後、ちょっとだれるというか、グダグダっぽくなるんですが、そこが、もう、後期 石ノ森! という感じが出てて、いいのです。
 仮面ライダーブラックとか、あのあたり。
 009でも、私があまり好きでない、後期。サンジェルマンとかの。
 でも、そういうのが、きちんと映画になってグダグダが再現されてるというので、フフフフフ という、背徳と喜びが混じったうれしさがこみ上げてきて−。
 
 で、真ゲッターロボのあれをやってー、ああ、ここまで来たら、あの例の、ほら、ちょっとブラッドベリなあれをするしかないべ? と思ってたら、まさかの『サイボーグ009超銀河伝説』ですよ! ぎゃー。そこに、落としますかー。
 
 ほかにも、これどうしますか? と思って、ずーっと気にしてたら、こっちも「どうもしません!」というぶん投げ。
 
 それをしちゃいますか!
 という・・・。
 
 見かけは003と009ですが、全体は002と009のイチャコラだし、もう そんな、そこまでムキにならなくても な002が可愛いし。煙草だし、お酒だし。
 
 煙草の表現が、また良かった。
 グラスの持ち方も−。
 
 前に、押井監督が、いまうる星やつらを撮るんだったら、コンビニの中を全部、CGで、棚の中の壜、1本1本まで作ってやると言ってて、それに何の意味があるんだろうと思ってたんですが、そういうのも答えが書いてあって そういうことだったのかー、ほほふーん。
 
 ちゅうふうに、楽しめたので、009とか、押井監督とか追っかけてきた変な人は楽しめるんじゃないでしょうか。
 知らない人も、あのグダグダが後を引く感じの構成になってるんで、これからもいろいろ思い出しては、あれ? みたいな感じになって、楽しめると思いますナー。
 
 おいしいです。
 
 ちょっと、別件も。
 某氏が書いてたことに納得したのですが、エヴァQについて。
 見に行くつもりが、気持ちがぜんっぜん、涌いてこないのです。
 009と逆。
 
 破が大好きだったのに何で?
 
 それは、満腹したからだよ。
 
 というのに、納得しました。
 おいしい。
 おいしすぎる。
 後を引かない。
 
 
 009は、そうじゃない 変なとこが残った作品になってるので、なにかこう、ずっと尾を引きそうです。
 自分の中に、どう 残っていくのかも込みで、興味深い、楽しい映画でした。
 
 
 おしまい。
 
 

『009 RE:CYBORG』

 『009 RE:CYBORG』見てきました。
 
 大変楽しかった。
 お尻まであんこがつまった鯛焼き
 
 でも、どこが楽しかったかは、ネタバレになるのです。
 ンが、それ込み込みでないと楽しさの説明が出来ないのでひとつずつ〜。
 
 まず、予告、トレイラーが良かった。
 新しい解釈。
 ガンヘッドを作るなら、ロボットをどう見せて闘うかーちゅうのを考えなきゃいかん。
 
 そうなっとりますな。
 周りに溶け込む007。
 ジャンプして脚のブースターを展開。跳ぶけど、一回沈み込んで、左右にバランスをとってから、一気にぐわーっと飛んでく002とか。
 
 これ見ただけで、大興奮!
 
 予告から、かなり期待して見に行きました。
 
 そしたら、なぜか009が記憶を失ってて、そこからの復活で、能力にも目覚めるちゅう話になってました。
 ここら辺、無理なく説明できるのと、緊張感のバランスがうまいし、原作第一話の、どうしてこんなことが出来るんだろうと能力に戸惑う部分の再現にもなってる。
 
 そしてー、そしてー、003が。
 ハリウッド映画みたいになった003が、我々のために惜しげもなく!!
 
 うむ。
 全体の造りは、ハリウッドで映画化した実写009ちゅう感じになってるのです。
 あれをコミカライズしたのが石ノ森版に見えちゃうような、逆算造り。こういうひとを石森章太郎が描くと、002のああいう鼻になるんだよ という。
 
 それで、何の話をやるのかと思ったら、これがあなた、天使編なのです。びっくり!
 
 あと、加速装置使いまくり。
 ひゃっほーい!
 表現もいろいろ。
 基本は物理法則を描くのではなくて、加速状態に入った009視点をフルCGのパワーで超・再現。
 物理法則でなくて、というのは、あのミュートスサイボーグ編なんかにもあったけど、スタープラチナ的な、魔法的な表現。水たまりの上を波紋を残しながら、暗闇を抜けていくように走り抜ける みたいなのが殆ど。
 ほんとなら、加速で音速を突破してあれこれなんですけど、そういうのはあまりない。
 あまりないのですが、ドバイ脱出の時は、割と物理法則がちゃんと働いてる感じに。表現もアニメ動画的に、古典的になってる。
 
 2次元アニメと3次元CGアニメのいいどこどりで画面、見てて飽きが来ません。
 あのフェンスごしのシーンとか、いままでの2Dアニメじゃできなかったのですが、それが出来てて演出にもなってて。
 
 ほほう。
 ふふーん。
 
 と、大興奮。
 あ、でも、ちょっと車の表現はいかがなモノ と思いました。車 1台ずつ、みんな同じ速度じゃいかんでしょう。ひょっとして、そういう未来なのかも知れませんけど、ちょっとしょんぼりでした。
 
 そいで。
 途中の聖書的な表現 とか 実は・・・ を語る004とかが、押井守的で、またまた素敵なのです。神山健治監督のことは、作品の方ではよく知らないんですが、そこかしこにちょっと押井的なのが残ってて。
 
 そこがもう、石森+押井で。
 嗚呼! 
 
 こないだ、押井監督の勝つために闘え! の監督編を読んで、そこでキャメロンへの敗北宣言を読みましたけど、そこを踏襲した神山監督版、勝つための戦い方が読み取れるのも面白いのですねー。
 vs アバターになってるのです。
 

勝つために戦え!〈監督篇〉

勝つために戦え!〈監督篇〉

神山健治の映画は撮ったことがない~映画を撮る方法・試論 (STUDIO VOICE BOOKS)

神山健治の映画は撮ったことがない~映画を撮る方法・試論 (STUDIO VOICE BOOKS)

 
 あ! 思い出しました。この映画は撮ったことがない も読んでたので、その答え合わせも出来ちゃう。
 
 それで・・・

補足の補足

 全般に押井守小島秀夫リスペクトの円城塔による再現が入っていて、暴走はパトレイバー1。全体の構造は『ハーモニー』などにも共通しますが、2。ワトソンが踏み切るのは、原作の攻殻
 世界中を巡るのは『80日間世界一周』という説も出ましたが、メタルギアソリッド4と、その元ネタである007と見ることも出来るかも。
 
 ラストシーンは『ヤングシャーロック ピラミッドの謎』と、見ました。

屍者の帝国

屍者の帝国

屍者の帝国

 京都SFフェスティバル京フェス)でも、ちょっと、『屍者の帝国』読書会を覗きました。
 途中から、大森望氏も加わって、先日のトークショウで明らかになった情報も加えての再検討がなされましたが、きっと、だれかがレポートをあげてくれる・・・。
 
 山田正紀『エイダ』は読んでないので、分かりませんでした。
 
 
 
 
 先日のブログ、分かりづらかったので、補足を。
 
 円城塔伊藤計劃の友情の物語 という文脈で説明されるし、そういう物語を読み取ることが出来ますけど、私は もうひとつ 小島秀夫監督が継ぐ人を探し、何度も失敗してる という物語を見たのでした。
 そういうブログでした。
 
 
 それが今度の早川SFコンテストにもつながる「話」に見えたという訳です。
 
 
 今度出る、『アヌビス ZONE OF THE ENDERS』リメイク版。エンダーズという言葉の意味は、作中では言及されません。前作で説明されてるかも知れませんが、スコットカードを思い出させます。
 主人公機に搭載されてる人工知能はエイダと言います。 
 アヌビス は、犬をほうふつとさせますが、これは小島プロダクションの伝統で必ず、動物が絡んでくるのです。
 多分、クレイグ・トーマスの影響です。
 

屍者の帝国 その2

屍者の帝国

屍者の帝国

 
 あのあと、読書会に行ったり、SFマガジンの特集を立ち読みしたり(まだ購入を悩んでるデス・・・)しました。
 岡和田氏の解説というか論考が一番、がっかりで、著者とも面識のある人なんだからもっといろいろ書きたいことととか書けることががっつりあるでしょー! と思ったのでした。
 
 週末は、京都SFフェスティバル京フェスですね。
 何年か前の京フェス円城塔氏と新城カズマ氏の対談です。
 http://www.ustream.tv/recorded/2326751
 ふたりあわせて舞城王太郎とか、城城(ジョウジョウ)の奇妙な冒険とかゆってましたが、まさかほんとに舞城ジョジョが出るとは思いませんでした。
 01:34:30あたりから、ラブプラスの話題に入り、興味津々で触る新城カズマ氏と、ぜったいに触ろうとしない円城塔氏が見れます。
 
 まえふりです。
 
 まえふりですが、さておき。
 『屍者の帝国』について語るとき、ふたりの友情でうんぬんという文脈で語られることが多いのですが、私が読みとったのはちょっと、別の物語で・・・。
 先日もちょっと、書きましたが。
 
 小島秀夫監督が“自分の分身のような存在”と評したSF作家,故・伊藤計劃氏とは?「伊藤計劃記録:第弐位相」刊行記念トークショーをレポート - 4Gamer.net
 

小島秀夫監督が“自分の分身のような存在”と評したSF作家,故・伊藤計劃氏とは?「伊藤計劃記録:第弐位相」刊行記念トークショーをレポート

 
 ここら辺の話絡みで感想書いてる人がいないなーと思うのです ぞ。
 
 伊藤計劃は、小島監督に多大な影響を受けてます。
 小島監督作品というと、メタルギア、同ソリッド、ポリスノーツスナッチャーZ.O.E・・・は、違いますな。Z.O.Eは、小島監督の作品ではない。
 読んでて疑問に思ったのが、円城塔はここら辺の小島監督作品で遊んだことがあるのかなー ということ。
 円城塔は、ゲームで遊ぶ人なのか。
 ウルティマオンラインの中で、小説を売ってたという話があるので、多少はゲームするみたいですけど、MGS4の小説を読んだときは、ゲームで遊んだことはなかった風でした。
 でも、小島監督作品で遊ばないで、伊藤計劃を再現できるのか という疑問がある。
 ピンカートン探偵社が戦争企業に変わってるのは、ちょっとMGS4風なんですが(企業が戦争を仕切る という設定)そのくらいでしょうか。
 円城氏のツイッターを追いかけても、ラブプラス小島監督作品ではないけど、コナミゲーム)攻略彼氏を構築するのはどうかというような話は出てくるんですけど、寧々さんとつきあったという話は出てこない。
 
 ふむー。
 
 

リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン (Vol.1) (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン (Vol.1) (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

 もはや、高額どころか、入手さえ不可能になった『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』。
 本作と『ドラキュラ紀元』が『屍者の帝国』オープニングの下敷きになってます。
 なぜ、歴史上の実在の人物や虚構の人物が入り乱れて活躍するのかといわれたら、これが元ネタだからとしか言いようがない。
 ちなみに、翻訳者のひとりは秋友克也氏。
 カプコンのアメコミ絡みゲームの中心人物。シェーキー秋友という名前で活躍してました。デビルメイクライなどにも参加して、その後、カプコンを退社。カプコン時代の上司が作ったゲーム・リパブリックに移籍してます。
 今の日本におけるアメコミブーム源流のひとつが、カプコンX−MENだったというのは間違いのないところで、日本のアメコミ文化にとても貢献されてるのですな。
 カプコンは、有名なゲームクリエイターイラストレーターを多数 輩出してて、秋友氏もそのひとりなのです。
 
 ちょっと脱線しました。
 
 脱線ついでに。
 小島監督がロボットゲームZ.O.Eをプロデュースするにあたり、出した企画でセックスを取り上げたものがありました。記録がネットに残ってないので、記憶に頼りますが、宇宙に出た人類がなぜか子供を作れなくなってしまう。ところが、火星にだけ、子供を作れる人類が残っている。そこで、子供を生める人類の争奪戦が始まる みたいなお話で。
 家庭用ゲームの中で、セックスというのは当然、タブーなので、採用には至らなかったそうですが、伊藤計劃氏が、死体の奴隷化によって栄える文明というタブーを取り上げたとき、ゾンビ好きというだけでなく、このボツ企画のことも念頭にあったのではないかな と思った次第。
 
 脱線が多いです。
 お話を戻します。
 小島秀夫 on Twitter: "MGSのテーマは『次の世代に遺すもの』。MGS1ではGene(遺伝子)。MGS2では遺伝子に載らないMeme(文化的遺伝子)、MGS3では遺伝子とミームの尺度となるScene(時代)、MGS4ではそれらでは伝わりきらない生身のSense(意志)、PWではPeace(平和)だった。"
 

小島秀夫 ‏@Kojima_Hideo
 
MGSのテーマは『次の世代に遺すもの』。MGS1ではGene(遺伝子)。MGS2では遺伝子に載らないMeme(文化的遺伝子)、MGS3では遺伝子とミームの尺度となるScene(時代)、MGS4ではそれらでは伝わりきらない生身のSense(意志)、PWではPeace(平和)だった。

 
 話したかったのは、『屍者の帝国』と小島監督のお話。
 小島監督は、MSXの作品、メタルギアのリメイク作品ともいえるメタルギアソリッドで有名になりました。ただ、本人はシリーズをやめたい、引き継がせたい と何度も言ってます。
 それは、作品のテーマとも一致します。
 MGS2(メタルギアソリッド2)くらいから言ってたはず。
 
 で、ひとりの候補があがります。
 MGS2に付録のパロディ小説で参加していた村田周陽、通称 ムラシュウ。
 村田氏は、その才能を見込まれて、あまり成績の芳しくなかったロボットゲーム Z.O.Eに参加。シリーズ第二作である『ANUBIS Z.O.E』を完成させます。
 これは、ほんとの傑作ゲームで、いまでもファンが多いし、10年も前のゲームなのに、最近 プラモやフィギュアにもなっています。
 
 ところが、びっくりするほど、売れなかった。
 
 小島監督は新人研修などで、ゲームソフトの販売数を当てさせたりしていましたから、自分でも売り上げ本数の見込みには自身があったはずです。その想像を大きく下回る販売本数だったのだから、二重にショックだったでしょう。
 
 このときの監督経験がとても辛かった と村田氏はインタビューで語っていますが、それが原因なのか、このあと単独・監督作品をひとつも作らなくなります。
 よく、勘違いされているのですが『ANUBIS Z.O.E』は小島監督の監督作品ではありません。小島秀夫監督によるプロデュースで、監督は村田周陽氏です。小島監督の「監督」というのは高橋名人の「名人」みたいなもので、これが誤解の原因だと思われます。
 
 小島監督は多分、自分の後任の有力候補として、村田氏を考えていたはずです。ところが、それがうまく回らなくなってしまった。
 
 そのころ、うわさに聞こえてきたのが伊藤計劃氏。
 小島監督は、伊藤計劃氏の同人活動を目にするようになります。
 実際にあうようになって、その見識、着想、才能に小島監督は惚れ込みます。
 のちのトークショウでこんなことを言ってます。

小島監督は「アイデアや設定を理解してくれる,言葉では表現できない自分の分身みたいな存在。今でも『伊藤さんならどう思うだろう?』と思いながらゲームを作っている」と答えた。

 
 メタルギアソリッド3を経て、メダルギアソリッド4へ。
 このとき、すでに伊藤計劃氏は病床にありました。
 小島監督は伊藤氏にMGS4のノベライズを依頼します。
 
 一方で、自身は、村田周陽氏との共同脚本・監督にてゲーム MGS4を完成させます。
 wikipedhiaによるMGS4の制作スタッフは以下の通り。

原案・企画・ゲームデザイン - 小島秀夫
ストーリー・脚本 - 小島秀夫、村田周陽
プロデュース・監督 - 小島秀夫
ディレクター - 村田周陽

 
 このあとPSP用大作ソフト MGSピースウォーカーを経て、小島監督は新しい企画を立ちあげます。メタルギアの大型スピンオフ作品、ライジングです。
 これは、小島監督が直接はタッチせず、新規スタッフで作成させました。
 小島監督は次のスタッフが新しいメタルギアを造り、バトンタッチできることに期待したのです。
 このころ、自分が死んでもメタルギアは続くという主旨の発言をしています。
 
 が、頓挫しました。
 かなりの時間とお金をかけたものの、どうにもゲームにはならず、断念せざるを得なかったのです。
 
 MGSのテーマが『次の世代に遺すもの』であるはずなのに、またもバトンタッチできなかったのです。
 
 結局、この企画はカプコンから独立したクリエイターの集団であるプラチナゲームズ(代表作『ベヨネッタ』など)が引き継ぐことになりました。2013年発売予定です。
 
 
 さて。
 上にも取り上げた 2011年4月23日の「『伊藤計劃記録:第弐位相』刊行記念トークショー」は、ネット中継されていました。
 当時、既に『屍者の帝国』執筆中であった円城氏もこの中継を見ていて、「35才最高傑作説」を聞いて、うーん とうなったりしてます(ツイッターで確認できました)。このときの円城氏の年齢と芥川賞、生きていたら伊藤計劃氏が何才であったかを考えると、なかなか感慨深いものがあります。
 
 
 このトークショウには、大森望氏や、早川書房 第二編集部長 塩澤快浩氏も参加していました。
 先頃、早川書房の新しいSFコンテストが発表されました。審査員には小島監督の名前もありますから、すでにこのときにコンテスト審査員の話は固まっていたのでしょう。
 募集の概要には、伊藤計劃氏を越える新しい才能を待ち望む とあります。これは早川書房もそうでしょうが、小島監督の悲願でもあるでしょう。
 継ぐものが現れるのか。
 
 一方で、村田周陽氏の『ANUBIS Z.O.E』は、この10月 リメイク版が発売されます。限定版も出ます。
 よく見ると、その限定版にはメタルギアライジング体験版DLコードが付いています。さらに、SF作家のエッセイ・コメントも付いています。作家陣の中には、あの円城塔氏の名前もあります。
 
 さて。
 円城塔氏が何を書いているのか。
 とても、気になるところです・・・。
 
 
 少し、話がずれます。
 ゲーム・リパブリックはその後、事実上の解散。社長 ひとりだけの会社になり、社員は全員解雇となりました。
 最近、アメコミ翻訳に秋友氏の名前がクレジットされることが多くなりましたが、アメコミブームとリパブリックの解散が理由ではないかと思うのです。不謹慎ではありますが、リーグオブエクストラオーディナリージェントルメンの3巻が、翻訳されるのではないかと、期待したりしています。
 

ZONE OF THE ENDERS HD EDITION (通常版) - PS3

ZONE OF THE ENDERS HD EDITION (通常版) - PS3

 
 
 ええと、あまり『屍者の帝国』の話ではなくなってしまいました。
 小島監督と、その息子たち というお話で流し読んで頂ければと思います。
 
 そういえば、元祖のメタルギア早川書房一色でした。中ボスは「ランニング・マン」「ブラック・カラー」など、当時のハヤカワ文庫タイトルを想起させるものから来ていました。メタルギアに心酔していた伊藤計劃氏は、多分、このあたりも読んでいたのではないかと考えたり、考えなかったりです。

屍者の帝国

屍者の帝国

屍者の帝国

 おそるべき伊藤計劃再現度。悪ふざけ とインタビューでおっしゃっていましたが、そのレベルが高いですのう。もともと伊藤計劃作品が本気なのか、悪意のある冗談なのか区別がつかないんですが、そこもきっちり再現してあるので感動すべきなのか、大爆笑すべきなのか多いに迷います。伊藤計劃長編2作が、まったく、同じ構成なのをこちらでも抑えてて、ちゃんとワンパターンにもなってます。生前は、本作で、初めてそのワンパターンを抜けるかと期待してたんですが、こうなった以上、そこを外れちゃダメで・・・。生きていればきっと、伊藤計劃ツイッターを利用したと思うんですが、そこもちょっと再現してる感じがあります。あれこれネタを見かけるのですが、ネタバレになります。ここら辺だろうと思うのは、伊藤計劃作品、ドラキュラ紀元、リーグオブエクストラオーディナリージェントルメンとアラン・ムーア作品、映画 リーグオブレジェンド、映画パトレイバー1と2、一連の神林長平作品、ストライクウィッチーズ、意識は傍観者である、魚は痛みを感じるか?、テッド・チャンのインタビュー、ディファレンス・エンジンスチームパンクサイバーパンクについての論考 などなど。メタルギア神林長平は通底してる感じでどれとは言いづらい。ああ、あと円城氏が気にしてた小島監督の35才最高傑作説、メタルギアのテーマ(ソリッドシリーズの1作ごとのそれ)が示したものと、次世代であるムラシュウと伊藤計劃。アヌビスZOEとHD版アヌビス、円城塔コメントなど、大変グルグルするので、岡和田さんがどう読んだか話を聞きたい。
 アララト山と進化というのは、安彦良和クルドの星』は意識されてますか? 


 MGSのテーマは『次の世代に遺すもの』。村田周陽(1970)、円城塔(1972)、伊藤計劃(1974)。ここら辺はちょうど、ファミコンブームとガンダム直撃世代。小島監督が自分の跡を継ぐものとして伊藤計劃と村田周陽を考えていたのは、なんとなく分かります。とくにナンバリングタイトルはもう、引き継いで自分は別のものを作りたいと何度も言ってますが、結局 自分が監督してます。MGS4では村田周陽と共同監督・脚本。ノベライズは伊藤計劃。村田周陽 単独監督作はアヌビス1本だけで、すでに9年前。

 ジョン・ヴァーリィは入ってますか。「■」は意識してますよな?